文政8年『神社仏閣順拝帳』
四国25番 宝珠山 真言院 津照寺
土佐国安芸郡津寺村(高知県室戸市室津)
津照寺は室津港を望む小高い山の上にあり、「津寺(つでら)」の通称で知られています。東寺と称する最御崎寺、西寺と称する金剛頂寺と合わせて室戸三山とも呼ばれます。
寺伝によれば、大同2年(807)弘法大師が当地を巡錫した折、この山の形が地蔵菩薩の持つ宝珠に似ていることから霊地であると感得し、自ら刻んだ地蔵菩薩像を本尊として一寺を建立したことに始まるとされます。
平安時代から地蔵菩薩の霊場として知られていたようで、『今昔物語集』巻十七の「地蔵菩薩火難ニ値ヒ自ラ堂ヲ出ルヲ語ル」に津寺として登場し、地蔵菩薩の霊験譚が記されています。
また、慶長年間(1596~1615)山内一豊が室戸沖で嵐のために遭難しかかった際、津照寺の地蔵菩薩が僧の姿で楫をとり、その危難を救ったという伝承があります。以来、楫取(かじとり)地蔵と称され、漁業関係者の信仰を集めています。
長曽我部氏や山内氏の庇護を受けて寺運は隆盛していましたが、明治の廃仏毀釈により廃寺となり、本堂のみが地蔵堂として残りました。明治16年(1883)に再興されましたが、かつてに比べて境内もすっかり狭くなってしまったといいます。本堂は昭和50年(1975)、大師堂は昭和38年(1963)の再建です。
残念ながら、現在では太郎助が参拝した頃の面影はほとんど残っていないものと思われます。
津照寺の納経
『順拝帳』を見ると、墨書部分は版木押しで、右から順に
「奉拝礼四国二十五番札所」
「寶楼閣地蔵菩薩廣前」
「弘法大師一刀三礼御作」
「土州真言院津照寺」
上部に「今月今日」とあり、日付は入っていません。
「奉拝礼」は「奉拝」と同義でしょうが、より丁寧な印象があります。「奉納経」ではなく「奉拝」「奉拝礼」を使った例としてかなり古いものになるのではないでしょうか。
中央の朱印は宝珠に地蔵菩薩の種字「カ」、右上は「第二十五番」、左下は白抜きで「寶珠山」。
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津照寺の概要
宝珠山 真言院 津照寺(しんしょうじ)
現名称:宝珠山 真言院 津照寺
御本尊:地蔵菩薩(楫取地蔵)
創建年代:大同2年(807)
開山:弘法大師
所在地:土佐国安芸郡津寺村(高知県室戸市室津)
宗派等:真言宗豊山派
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