文政8年『神社仏閣順拝帳』
西国28番 世野山 成相寺(なりあいじ)
切戸文殊堂・智恩寺を参拝した3月4日、太郎助は天橋立の北にある西国28番・成相寺にも参拝しています。
成相寺は天橋立を望む成相山の中腹にあります。現在の山号は成相山ですが、かつては世野山と称していました。西国三十三所の中で、もっとも北に位置する札所です。御本尊の聖観世音菩薩は「身代わり観音」「美人観音」として知られています。
寺伝によれば、文武天皇の勅願所として慶雲元年(704)真応上人によって開かれたといいます。古くより名高い霊場で、『梁塵秘抄』には七つの霊験所の一つとして挙げられ、『今昔物語』にも成合(成相)観音の霊験譚があります。
もとは今より高い位置にありましたが、応永7年(1400)の山崩れの後、現在地に移転したと伝えられています。現在の本堂が建立されたのは安永3年(1774)、太郎助の参拝の約50年前です。
成相寺の納経
納経印の墨書は、右から
「奉納経」
「本尊正観世音大士」
「丹州世谷山」「成相寺」
「酉三月四日」「行者丈」
中央の朱印は、宝珠の中に蓮と聖観音の種字(梵字)「サ」。右上は「西国二十八番札所」のようです。左下の印は判読できません。
「正観世音大士」は「聖観世音菩薩」と同じ意味です。山号は「世野山」が「世谷山」になっています。大乗寺の「椙樹林」が「松樹林」になっていたり、「智恩寺」が「知恩寺」になっていたりするのと同じで、昔の人は結構当て字を使っていたことがわかります。
この後、太郎助はまっすぐ四国へと向かったようです。西国三十三所の中で、丹後の2ヶ所は他の札所から離れているため、後の効率を考えて先に参拝したものと思われます。
成相寺の概要
現名称:成相寺
御本尊:聖観世音菩薩
所在地:丹後国与謝郡成相寺村(京都府宮津市成相寺)
宗派等:真言系単立
http://www.nariaiji.jp/
コメント