浄土真宗と御朱印(7)

御旧跡巡拝帳

江戸時代の真宗の順拝帳から、本願寺派(西本願寺)・大谷派(東本願寺)以外の宗派の御判を紹介したいと思います。

浄土真宗と御朱印(4)~(6)で、江戸時代の本願寺派・大谷派の御判を紹介しました。本願寺派や大谷派が御朱印をしなくなったのは戦後の話であり、戦前はもちろん、その起源は江戸時代に遡ることを証明するためです。

そのため、本願寺派・大谷派以外の御判についてはほとんど触れなかったのですが、順拝帳には本願寺派・大谷派だけでなく、高田派や仏光寺派など他派の御判もあります。江戸時代の真宗の門徒が宗派や本山の違いに関係なく、親鸞聖人ゆかりの寺院を巡拝していた様子がわかります。

それでは高田派の本山・専修寺から。

真宗高田派

専修寺の御判

本山・専修寺(三重県津市一身田町)。寛政2年(1790)。「勢州一身田(勢州は伊勢国のこと)」「高田山専修寺 御門跡」とあります。

真宗佛光寺派

仏光寺東山御坊の御判

佛光寺御門跡東山御坊、現在の佛光寺本廟(京都市東山区粟田口鍛冶町)。寛政7年(1795)。佛光寺は親鸞聖人を開山としていますので、開山上人御廟所とは親鸞聖人の廟所(お墓)という意味になります。

真宗興正派

天満興正寺の御判

「摂州天満 堀川御堂」。寛政2年(1790)。大阪市北区天満にあった興正寺の天満御坊(天満別院、天満興正寺、産寺)ではないかと思われます。昭和40年(1965)旭区に移転し、現在は大阪興正寺と呼ばれています。ただし、ネットで調べた限りでは天満の「堀川御堂」という名は見つからなかったので、確証はありません。

江戸時代の興正寺は西本願寺の脇門跡でしたが(そのため、京都の本山・興正寺も西本願寺に隣接しています)、江戸時代初め以来しばしば別派独立を志向し、寛政2年当時も西本願寺と係争中でした。このときは文化8年(1811)に幕府から興正寺を西本願寺の末寺とするという裁許が出ていますが、明治9年(1876)ついに別派独立を果たしました。

真宗木辺派

錦織寺の御判

本山・錦織寺(滋賀県野洲市木部)。寛政7年(1795)。刷り物を貼り付けています。

「錦織寺」「四條皇帝 勅願所(四條皇帝=四條天皇)」「一、本尊常州霞浦感得阿弥陀如来」「一、開山聖人白昼満足之御影」「同聖人霊夢之毘沙門天王 伝教大師御作」「霊宝略之」

真宗の御判=御朱印が納経の証明ではなく参拝の記念に頒布された刷り物からきていることがよくわかります。

真宗出雲路派

毫摂寺の御判

本山・毫摂寺(福井県越前市清水頭)。安政7年(1860)。刷り物に年月日を入れているようです。「越之前州清水頭讃門徒本山」「勅願所 出雲路山毫摂寺」「霊宝略縁起別紙載別紙者也」とあります。「越之前州」は越前国のこと。

真宗の越前四箇本山のうち、三門徒(讃門徒)の系譜に連なるのは誠照寺派・誠照寺、三門徒派・専照寺、山元派・證誠寺で、毫摂寺は系統が異なるのですが、室町時代中期に證誠寺と本末関係を結び、三門徒の影響を受けるようになったようです。「讃門徒本山」とあるのはそのためでしょう。

江戸時代は京都・青蓮院門跡の院家(門跡を補佐する格式)、つまり天台宗に帰属していました。しかし讃門徒本山を称している(真宗寺院としての伝統を維持している)わけで、現代の(宗教団体としての)宗派とは違う江戸時代の本山と末寺の関係の一端が伺えます。

最後の行に「三月晦日拝礼」とあり、参拝の証しである(納経の証しではない)ことが明らかです。

真宗誠照寺派

誠照寺の御判

本山・誠照寺(福井県鯖江市本町)。寛政7年(1795)。刷り物を貼り付けています。「越州鯖江」「上埜山誠照寺」。江戸時代、誠照寺は日光山輪王寺門跡(栃木県日光市、天台宗)の院家でした。

真宗三門徒派

専照寺の御判

本山・専照寺(福井県福井市みのり)。安政7年(1860)。「勅願所」「越前福井」「三門徒本山」「中野専照寺」とあります。

真宗山元派

証誠寺の御判

本山・證誠寺(福井県鯖江市横越町)。寛政2年(1790)。「一向真宗之源」「越州横越」「山元山證誠寺」とあります。

寺伝によれば、證誠寺の開基は親鸞聖人、第2世は親鸞聖人の子・善鸞上人、第3世はその嫡男の浄如上人とします。この由緒により明応8年(1499)後土御門天皇より「真宗之源親鸞嫡家」の綸旨を賜っています。「一向真宗之源」はこれによるものでしょう。

証誠寺の御判

同じく證誠寺、安政7年(1860)。刷り物です。「一向真宗之源親鸞嫡家」「霊宝具載于 当山略縁起」「越州横越」「山元山護念院 證誠寺 役所」。

真宗は一日にして成らず―親鸞と覚如・存覚真宗は一日にして成らず―親鸞と覚如・存覚

浄土真宗と御朱印(1)
浄土真宗と御朱印(2)
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