「御朱印」という名称について(2)

もともと「朱印」というのは朱肉を用いた印を表す普通の名詞で、それに「御」をつけて丁寧な言い方にしたのが「御朱印」です。

津村別院の御朱印

 

昭和4年(1929)北御堂・津村別院(大阪)。珍しい黒印の御朱印(?)です。

印章には朱肉を用いる朱印と墨を用いる黒印があります。現代ではもっぱら朱印ばかりが用いられていますが、もともと朱印と黒印では朱印が格上とされており、明治になるまで庶民は朱印の使用ができなかったそうです。

さて、江戸時代、幕府の公文書には朱印が押されていたので「朱印状」と呼ばれました。これを略して単に「朱印」と呼ぶこともあり、「御」をつけて「御朱印状」「御朱印」といったわけです。

朱印状によって海外貿易の許可を受けた船が「朱印船(御朱印船)」、将軍から安堵された寺社領などが「朱印地(御朱印地)」「朱印領(御朱印領)」ということになります。因みに、大名が寺社領を安堵した場合には黒印状が発給されたため黒印地・黒印領といいます。

つまり、江戸時代に「御朱印」といえば、幕府が公式文書に押した朱印、またはその文書の意味だったと考えていいでしょう。

では、いつ頃から神社やお寺でいただく墨書朱印を「御朱印」と呼ぶようになったのでしょうか。

それをはっきり示す資料がないため、はっきりしたことは言えませんが、それほど古い時代ではなく、最大限さかのぼっても大正の後半、一般化したのは昭和になってからのことではないかと思います。

もともと御朱印や納経が、神道や仏教において公式に位置づけられたものではなく、伝統的な習慣として続いているため、記録に残したり考察の対象になったことがありません。そのため、実物はあっても、それをどう呼んでいたかということはよくわからないのです。

ただ私は、いくつかの手がかりから、御朱印という言い方が一般化したのは昭和になってからだと考えています。「御朱印」という用法自体は大正の終わりあたりまでさかのぼる可能性がありますが、一般的に広く普及していたということはないと思われます。

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