古今御朱印覚え書

御朱印に関する考察、寺社参拝、拝受した御朱印、昔の御朱印・納経帳などについてのメモ

浄土真宗と御朱印(2)

      2017/03/08

授与しないのは本願寺派と大谷派のみ

仏教の宗派について基本的な知識がある人でも、浄土真宗といえばお西(本願寺派)とお東(大谷派)しか知らない人が多いように思います。

実際には本願寺派・大谷派のほかにもいくつかの宗派があり、特に両派を含む昭和14年(1939)の宗教団体法設立の時点で存在していた十派を「真宗十派」といいます(戦前は正式名称として「真宗」を称していたようです。本願寺派も「真宗本願寺派(本派)」と称しており、浄土真宗を用いるようになったのは戦後のことです)。

真宗十派
・浄土真宗本願寺派 西本願寺(京都市) 10,227ヶ寺
・真宗大谷派 真宗本廟(通称・東本願寺/京都市) 8,571ヶ寺
・真宗高田派 専修寺(津市) 627ヶ寺
・真宗興正派 興正寺(京都市) 513ヶ寺
・真宗仏光寺派 仏光寺(京都市) 357ヶ寺
・真宗木辺派 錦織寺(野洲市) 217ヶ寺
・真宗出雲路派 毫摂寺(鯖江市) 57ヶ寺
・真宗誠照寺派 誠照寺(鯖江市) 52ヶ寺
・真宗三門徒派 専照寺(鯖江市) 35ヶ寺
・真宗山元派 證誠寺(鯖江市) 21ヶ寺
※寺院数は平成26年版宗教年鑑による

さらに、戦後大谷派から独立した真宗浄興寺派(本山・浄興寺/上越市、14ヶ寺)や、お東紛争で東京本願寺(現在の東本願寺/台東区)を中心に300余ヶ寺が結集した浄土真宗東本願寺派、その他の単立寺院などがあります。

寺院数で言えば本願寺派と大谷派が圧倒的に多くて約1万9千ヶ寺、しかし真宗十派のうちの残る8派と浄興寺派、東本願寺派を加えれば約2千2百ヶ寺で、浄土真宗全体の約1割を占める計算です。これは無視できる数字ではありません。

これらの宗派は本願寺派や大谷派とは異なる独自の歴史を刻んできました。真宗十派のうち、西本願寺の脇門跡で明治9年(1876)に独立した興正派以外は本願寺の傘下に入ったことがありません。つまり、真宗は決して本願寺派と大谷派だけというわけではないということです。

そして、御朱印に関して言えば、本願寺派と大谷派以外の諸派は御朱印を否定していません。現時点で私が所持しているのは東本願寺派本山の東本願寺と浄興寺派本山の浄興寺ですが、それ以外の本山でも御朱印は授与しているようです。

東本願寺の御朱印

東本願寺(東京都台東区)
浄土真宗東本願寺派本山

浄興寺の御朱印

歓喜踊躍山浄興寺(新潟県上越市)
真宗浄興寺派本山

mixiコミュニティに次のようなページがありました。

浄土真宗寺院で御朱印をいただけた寺

このページを見ると、高田派本山の専修寺をはじめ、本願寺派・大谷派以外の本山はすべて名前が挙がっています。

ネット上にアップされているものを探してみました。

高田派本山 専修寺(TERR’S Web Page)

興正派本山 興正寺(ワタシャジ)

仏光寺派本山 仏光寺(京都の神社・仏閣)

木辺派本山 錦織寺(Die Zauberfloete)

出雲路派本山 毫摂寺(開運の扉)

誠照寺派本山 誠照寺(御朱印集め漫遊)※リンク切れ

三門徒派本山 専照寺(御朱印集め漫遊)※リンク切れ

山元派本山證誠寺については、ネット上で見つけることができませんでしたが、拝受したという情報はありました。

単立寺院の御朱印としては、二十四輩8番の蓮生寺(福島県東白川郡棚倉町)、親鸞聖人が『教行信証』を執筆されたという稲田御坊・西念寺などでいただいています。

西念寺の御朱印

稲田御坊西念寺(茨城県笠間市)

蓮生寺の御朱印

宝池山蓮生寺(福島県東白川郡棚倉町)

つまり、「御朱印をしない」のは浄土真宗の中でも本願寺派と大谷派限定であることは明白です。寺院数では少数派といえども、十把一絡げに「浄土真宗は」などと括るのは極めて失礼な話であり、不適切ではないでしょうか。宗派の数からいえば、御朱印を授与する宗派のほうが多いわけで、むしろ本願寺派と大谷派が特殊だとも言いうるわけです。

つまり、「浄土真宗は御朱印を授与しない」ではなく、「浄土真宗本願寺派と真宗大谷派は御朱印を授与しない」というべきだと考えます。

それでも、もし御朱印を授与しないのが真宗の伝統で、近年になって本願寺派・大谷派以外の各派が授与するようになったというのであれば、「浄土真宗は御朱印を授与しない」という言い方をしてもやむを得ないかとは思います。

しかし実際には、少なくとも第二次大戦以前は本願寺派・大谷派とも当然のように御朱印を授与しており、その歴史は江戸時代にまでさかのぼります。本願寺派と大谷派が御朱印を授与しなくなったというのは第二次大戦後の話でしかありません。

ということで、次回以降、戦前さらに江戸時代の浄土真宗の御朱印の実例を見ていきたいと思います(6月7日の予定)。

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Comment

  1. 和君 より:

    HPを興味深く見させていただきました。
    私がいただいた朱印(納経)に関して一寸したコメントです

    真宗興正派 興正寺の物は印を見ると判りますが、朱印ではなく「参拝記念」だそうです(無料でいただけました)。

    京都の光圓寺さん(大谷派)でも「朱印は行っておりませんが参拝記念に」と朱印様の物をいただけました(無料でした)。

    山元派本山證誠寺では佛心と書かれた朱印(納経)を拝受いたしました

    真宗誠照寺派誠照寺ではHPリンクにあった物は報恩と記載されていますが、私が拝受した物は慈光と記されておりました。
    また、印が寺務所カウンター外に置かれ参拝者が記念に自由に押せるように成っているように見受けました。

    寺により何種類かのバージョンが存在すると言った事も有るようですね。

    ご参考まで

    • kokonkomainu より:

      和君様

      情報ありがとうございました。

      歴史的経緯から考えると、真宗の御朱印は他宗と違って納経を起源としていませんので、
      知ってか知らずか、興正寺などの参拝記念とするのが正しいのかもしれませんね。

      今後ともよろしくお願いします。

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