古今御朱印覚え書

御朱印に関する考察、寺社参拝、拝受した御朱印、昔の御朱印・納経帳などについてのメモ

大乗寺〈文政8年〉

      2015/10/05

文政8年『神社仏閣順拝帳』
東香山 大乗寺(だいじょうじ)

大乗寺の納経印

現名称:大乗寺
御本尊:釈迦牟尼仏
所在地:加賀国石川郡寺地村(石川県金沢市長坂町)
宗派等:曹洞宗
http://www.daijoji.or.jp/

文政8年『神社仏閣順拝帳』、越後の乙宝寺に続いては加賀金沢の大乗寺です。乙宝寺からは直線距離で約300km、越後国の大半と越中国を越える大変な道のりです。参拝は2月26日、新暦の4月14日なので、11日かけて到着しているようです。

大乗寺は曹洞宗の名刹で、金獅峯椙樹林とも称しました。永平寺の四門首の一に数えられます。開山は永平寺第三世の徹通義介禅師、二世は曹洞宗の太祖と称される瑩山紹瑾禅師です。

寺伝によれば、弘長3年(1263)加賀の守護・富樫家尚が澄海を招き、野市(現在の野々市市)に真言寺院として創建されました。正応4年(1291)澄海は大乗寺を禅宗に改め、徹通義介を迎えて開山とました(弘安6年、正応2年という説もあり)。乾元元年(1302)には瑩山紹瑾が住職となります。
南北朝・室町時代には足利幕府の祈願所となって繁栄しますが、戦国時代になると兵火により伽藍を焼失しました。
天正13年(1585)前田利長の重臣・加藤重廉が檀越となり金沢城下に再興されました。その後、加賀藩家老の本多家の菩提寺となり、元禄10年(1697)現在地に移転しました。
寛文11年(1671)26世となった月舟宗胡は、27世を継いだ卍山道白とともに寺の復興に努めました。清規(僧侶の修行規則)を整え、それに則った厳正な修行を行ったことから「規矩大乗」と称され、当寺の全盛時代を迎えたといいます。

大乗寺の納経印

墨書は右から順に
「奉納大乗妙典 全部」
「加州松樹林大乗護国禅寺」
「文政八乙酉年三月廿六日」
「知蔵」「行者丈」

中央の朱印は八方崩しの書体で判読できませんが、「仏法僧宝」の三宝印と思われます。左下の印は「大乗蔵司」のようです。書体は九畳篆。

「奉納大乗妙典」というのは六十六部の納経請取の正式な書き方で、「奉納経」というのはこれを略したものです。「大乗妙典」は法華経のことです。

「全部」とあるのは法華経全部ということで、例えば寿量品とか普門品とかいった一部分だけの写経ではないということですが、これは本当に法華経全巻を奉納したという意味ではなく、決まり文句として考えるべきでしょう。江戸時代の六十六部は、写経ではなく納め札を納めるのが主流でした。

つまり、納め札を納めて、納経帳に納経印をいただけば、法華経二十八品の写経を納めたとみなされる、同等の功徳を得るというのが納経帳の意味だったと考えられます。

「加州」は加賀国のこと、「松樹林」は「椙樹林」の間違いでしょう。「松」と「椙」、どちらも「しょう」と読みますが、椙はスギ(杉)のことです。「大乗護国禅寺」は大乗寺の正式名称です。

「知蔵」「蔵司」は禅宗寺院の役職名で、「蔵主」ともいい、寺院内の経典・論書の管理を担当していたそうです。納経(写経の奉納)なので、経典の管理を担当する知蔵が応対するということでしょう。

ただし、これも実際に知蔵本人が対応したのではなく、定型の書式と考えたほうがいいのではないかと思います(知蔵配下の役僧だったとも考えられますが)。というのは、次に参拝する永平寺では、署名が執事になっているからです。執事は寺院の寺務の責任者ですから、自ら巡礼者の納経の対応をするとは考えられません。ただ、巡礼・納経する行者を尊んで、高位の役職者が写経を受け取るという形式が伝統として受け継がれていたのではないかと思います。

◆文政8年『神社仏閣順拝帳』
乙宝寺 → 大乗寺 → 永平寺

 - 文政8年『神社仏閣順拝帳』 ,

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